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編集局からの手紙「罪悪感・・・」:片山通夫
先日韓国へ行った。サハリンで知り合ったある夫婦が永住帰国したので、以前聞き洩らした話を聞きに行くのが目的だった。この機会にサハリンから韓国に永住帰国してこの2月で丸9年になる夫婦を訪ねた。
二人の韓国での生活はある意味では幸せなようだ。サハリンに比べて「安全な生活が送れる」というのがその理由である。もっともな理由だと思った。彼らが生活していた2000年までのサハリンは、とても安全とは言い難い社会だった。泥棒や強盗が横行し、カッパライは日常茶飯事だった。停電も毎日といっていいほど街のあちこちで起こっていた。冬に暖房が切れ、アパート全体が「氷の館」になっていたこともある。
しかし、「あまり幸せでないのでは」と本人たちは考え込んでいる。理由は簡単だが複雑な面もある。それは孫や子供たちと離れて老夫婦二人で暮らすことに対しての「罪悪感」だ。韓国での生活が「安全で快適」であればある程「自分たちだけが・・・」というのである。
半年ほど前に彼らはサハリンへ里帰りした。三カ月の予定であった。息子や娘、それにその友人たちが毎晩といっていいほど、コルサコフ(旧大泊)の自宅を訪ねてきて来てくれた。
老いた妻(写真左)がボクに言った。
「この人ったら、毎晩、息子の友達と飲んでばかりいて…」
隣で、夫(写真右)は苦笑い。
「酔っ払って、何もわからなくなるほど飲まなくてもいいのに」
妻は彼の体が心配なのだ。
夫はそうではないという。
「自分たちだけが韓国で安穏と暮らしていることを思うと辛くて・・」
「結局3カ月の予定が、ひと月で帰ってきた。子供たちの生活を見ているのが辛い」
「息子はこちらへ帰ってきてもいいよと言ってくれた」とうれしそうに話す。でも、老夫婦にはその気はないようだった。息子たちに迷惑をかけるというのだ。
それでも、息子や娘の世話になってサハリンで暮らした方がいいのかもしれないと時折考える。しかし、韓国で二人ひっそりと暮らす方が息子たちに迷惑をかけないのだと思いなおす毎日だ。またある時は「自分たちが子供や孫を『捨てて』来た」という罪悪感に悩まされる。
そんな時が「自分たちはあまり幸せではない」と思う時である。
「子供を捨ててきた親が幸せだなんて・・・」
妻が言うと、夫は鼻をすすった。
「離散家族の悲劇」はこの老夫婦に今も影を落としている。
@
2009-01-13
コラム
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サハリン残留朝鮮人の生活をライフ・ワークに、ビデオ、写真、文章など、あらゆるツールを使って記録しているフォト・ジャーナリスト。
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